レプトスピラ症とは

 2018年(平成30年)は、犬のレプトスピラ症発生について東京都内で2件の届出がありました。1例目は昭島市でパピヨン(613日届出 10歳 オス)、2例目は武蔵野市でミニチュアダックスフンド(115日届出 10歳 オス、その後死亡)でした。

 レプトスピラ症はズーノーシス(人獣共通感染症)であり、獣医師がレプトスピラ症の動物を発見したときは家畜伝染病予防法に基づき、都道府県に届け出なければならないことになっています(届出の対象となるのは7種類の血清型で、対象動物は牛、水牛、鹿、豚、いのしし、犬です)。

現在犬レプトスピラ症の届出の報告は西日本に多い傾向にはありますが全国的に発生が認められている病気です(不顕性感染や突然死、診断不十分などから届出に至らなかったものも含めると、届出数よりも多くの発生があることが考えられます)。流行している地域では流行しているレプトスピラ症のタイプ(血清型)にあったレプトスピラ症のワクチンを犬に接種することが推奨されています。 

 2018年は都下でたて続けに2件の届出がなされたので今後私たちの住む日野市・国立市・府中市・立川市・多摩市・八王子市周辺もより注意が必要になってくるかもしれません。

 レプトスピラ症とは、運動性のあるらせん状の細菌(スピロヘータ)で、病原性のあるものと病原性のないものの2種類に分類され、血清型(レプトスピラ症のタイプ)は250種類以上あります。そのうち、国内でレプトスピラ症の原因となったものは14種類ほどだといわれています。感染の可能性があるのは人・犬・猫・家畜(牛・豚・馬など)・げっ歯類・野生動物・爬虫類・両生類など多くの動物(100種類以上)です。

 レプトスピラは人や動物の体に入り込み、肝臓や腎臓で増殖し、尿とともに体外に排泄されます。そのような尿に汚染された水や土壌との接触によって皮膚の微細な傷や健康な粘膜から感染します。けんかや性交・汚染された敷材・洪水や台風の後の泥水などからも感染することがあり、特にネズミは自身に害を与えずに病原体をまき散らす可能性のある要注意な動物となります。

 犬のレプトスピラ症の潜伏期間は5日~2週間とされ、臨床症状から不顕性感染(感染しても症状は明らかに示さないもの)・出血型・黄疸型などがあります。犬ではほとんどの場合が不顕性感染ですが(不顕性感染でも病原体は排泄します)、出血型は12日の発熱後に食欲不振・嘔吐・下痢・結膜充血・出血傾向などを示し、黄疸型は黄疸と血色素尿が見られ、出血型・黄疸型のいずれも甚急性あるいは亜急性、慢性の経過をとり死亡します。甚急性のものは進行がはやいため腎不全や肝不全を認める前に、亜急性のものは肝疾患・腎疾患の複合的な症状がみられ腎不全により高確率で死亡します。甚急性・亜急性のものから生存した少数の犬は慢性経過をとり、慢性の肝疾患・慢性の腎疾患により死亡します。

 人に対する感染と予防についてですが、哺乳類に感染するレプトスピラの全てのタイプは人にも感染するものと考えられています。感染している動物の尿・汚染した水・保菌動物には素手で触らないようにしてください。レプトスピラに汚染されている水や食物を口にすることによる経口感染にも注意が必要です。感染が流行している地域では流行しているレプトスピラのタイプ(血清型)にあったワクチンの接種が有効とされます。日本国内だけでなく、東南アジアの一部のレプトスピラの流行地域では不用意に水に入らないこと、台風や洪水の後には特に注意が必要になります。感染が疑われるときは速やかに医療機関を受診してください。

 犬については、草むら・河川敷・堤防・農地や雑木林がお散歩コースに含まれていたり、川での水遊びや山遊び、またドッグランなど不特定多数の犬が集まるところに出入りする可能性のある場合は、レプトスピラ症の予防も含めたワクチンを接種したほうがよいと思われます。都市部のドブネズミによるレプトスピラの拡散について考えると一概に都市部だから安全ともいえないようです。ただし、犬についても病原性のある全てのレプトスピラに対するワクチンがあるわけではないので、日頃から不用意な拾い食いやたまり水を飲ませないこと、不調が見られた場合速やかな動物病院への受診も大切です。正しい情報と知識をきちんと持ったうえで、楽しい愛犬との生活を安全にお過ごしください。